世界のどっかでカオスに生きる(新)

日本を脱出した筆者が、旅、海外生活、留学、その他カオスでシュールな生き様を曝すブログ

メキシコの日系企業で社内通訳として働いたらこんな感じだった

ごきげんよう。

筆者は以前、半年ほどメキシコの某日系企業(製造業、日本人・メキシコ人人数比1対10ぐらい)で社内通訳として働いていたことがあります。

現在、メキシコには日系企業がどんどん進出しており(毎年コンスタントに増え続け、今や1000社以上が進出済み;外務省海外在留邦人数調査統計(H30)より)、それに伴って日本人駐在員とメキシコ人の意思疎通をヘルプする通訳者がかなり求められています。

そんな中、我こそは…!と思っても、実際に働いてみてどうなの?という知る機会はあまりなく、一歩踏み出す勇気が出ない…という人もいるのではないでしょうか。
そういう方々や、単純にメキシコや通訳という仕事に興味があるという人たちの参考になればと、リアルなところを書いてみます。

そもそも社内通訳ってどういうことするの?

会社によって多少差はあると思いますが、私が働いていた会社では以下のような感じでした。
操るべき言語はほぼ日本語⇔スペイン語。たまに日本語⇔英語

日本人駐在員とスタッフの会話をする際の通訳

品質検査の結果の説明のような専門的な話題から、本当にちょっとした会話までさまざま。
「◎◎さんに、今度の社内のパーティ行くか聞いてもらえる?」とか。笑
社内公用語は一応英語でしたが、普段の会話はお互いの母国語が主に使われていたので、地味に出番多し。
時に、人事評価や昇進面談など、結構パーソナルな場に同席する機会も。

ミーティング、会議での通訳

昨日機械にこういう不具合があった、それで、製造がこれだけ遅れたからこういう対策をとろう。とか、客先からクレームがあった、今度□□社のエライ人がくるから、工場をきれいにしておくように。といった報告・連絡、この工程のここの部分の品質が安定するようにするにはどうしたらよいか?客先から求められたレポートをこういう感じで出したいが問題ないか?などという一歩踏み込んだところまであり。

みんな結構なスピードで話すので(こういうとき、大抵みんな焦っていたりするので)、必然的に同時通訳のようになることがあり。

時には、納入業者さんやお客様など、外部の方との間に立つ機会もあり。
(外部の人の通訳は社内の人の通訳よりこわい)

報告書や資料の翻訳

本社は日本なので、通達やマニュアル、月報などの多くが日本語。そして、メキシコ人スタッフは日本語読めません。→出番!

月例の全体ミーティングで、日本人の社長がみんなの前で話すのは日本語。そして、(以下略出番!

逆に、現場でメキシコ人作業者が書く報告書はスペイン語。それをチェックして監督する日本人駐在員はスペイン語読めません。出番!

地味にひっぱりだこです。

日本人駐在員の生活のサポート

駐在員の方が普段メキシコで生活される中で、何かトラブルに遭った場合や、「店の人がスペイン語で何か大事そうなこと言ってるんだけど何言ってるかわからない」といった場合にも出番になります。

こういう機会は滅多にないですが、あるとすれば、業務時間外の対応になる場合も。

一日のだいたいの流れは?
業務の流れは、
・朝昼のミーティングの通訳・日報の翻訳(毎日)
・随時(ほぼ毎日)通訳に呼ばれたり、翻訳依頼を受けたり
といったことの繰り返しです。
会議が複数立て続けに入ったりすると、それだけであっという間に1日が終わる・・・!という日も。
月例会議が重なる月初は特に通訳の出番が多く、日々緊張の連続でした。

[ある日の流れ]
7時 自宅に通勤バスが迎えに来る
・・・会社は郊外の工業団地にあり、交通の便が発達していないので、車通勤の人以外はこのバス(ワゴン車)に乗って通勤します。市内の各エリアをまわるので地味に時間がかかる。。

8時 出社、ラジオ体操、朝礼、メールチェック、前日の日報の翻訳
・・・ラジオ体操、ちゃんとスペイン語バージョンです。

12時 昼のミーティング


1時~1時30分 昼食

・・・社食。メキシコ寄りの味付けなので、高確率で辛い料理が出てくる。
というか、時間30分だけ。。。

2時 月例会議
・・・主に英語の通訳

5時 エンジニア会議

・・・主にスペイン語の通訳

6時 終業

    通勤バスで帰宅

 

そう、何気にメキシコの就業時間は長いのです。。。
なんと世界一;OECD統計より
残業は余程のことがない限りありませんでしたが。

 

職場の雰囲気は?

日本人もメキシコ人も和気藹々と働いていました。
日本の会社ほど畏まった雰囲気ではなく、仕事中に他愛ない話をしたり冗談を言って笑ったりすることもしばしば。

かといって、仕事をいいかげんにするということはほとんどなく、日本人もメキシコ人もみんなやるべきときにはマジメで、ちゃんと目の前のことに向き合います。

かといって、仕事でストレスを抱えすぎたり、長時間残業をしたりということはあまりないようです。

たまに、大きな問題が起こったりしても、彼らの持ち前のポジティブさのおかげかそこまで深刻な雰囲気にならず、寧ろ笑い飛ばすくらいの勢い。

もともとガチの日本企業で働いていた身からすると、カルチャーショックを感じることもありましたが、実際の所その雰囲気に大いに救われてました。
いやー彼らのメンタル恐るべし。

そして、みんな人情味があり本当に親切
入社早々に名前を覚えてくれ、私の拙い通訳を我慢強く聞き、励まし、忙しい中でも質問に行けば優しく丁寧に答えてくれました。

ちなみに、筆者は現地採用だったのですが、駐在員の方々との関係も良好でした。
皆メキシコ人たちを指導する立場として来ていることもあり経験豊富でどっしり構えた、優しい方々。
おそらく待遇面ではかなりの格差があったんだろうな・・・と思いますが、それも気にならないくらい素敵で一緒に働きやすい人たちでした。

社内通訳として求められるもの

第一に、社内外のメンバー同士の意思疎通をスムーズにすることがいちばん大事なので、スピードが求められます。
お互いが言っていることを理解するスピード然り、それを各言語に通訳するスピード然り。

また、機械のこと、製品のこと、専門用語がバリバリ出てくるので、まずはこれをコツコツ覚えていくことが必要です。
覚えても覚えてもまだ新しい用語がどんどん出てくる・・・!という感じなので、常に学ぶ心構えが求められます。
実際に現場に出て製造の様子を見たり、分からないことを専門の人に自分から聞きに行ったりする行動力命。

通訳する相手も、せっかちな人だったり、逆に詳細なところまで知りたがる人だったりさまざま。
その人のニーズに合わせて、「社内顧客満足度(?)」を追求していく姿勢も重要なところ。

社内通訳は社内の会話の重要な部分に関わることがかなり多いので、責任重大です。
そのプレッシャーに押しつぶされない図太さ・落ち着き・開き直りや、多少の失敗をしても気にしない&しっかり反省・改善してまた走りだせるメンタルが大事だと思います。

気になる待遇

月に日本円で手取り10万円程度。月々2回に分けて銀行振り込みされます。
プラス、スーパーで使えるフードクーポン、積立金、高額医療保険などがついていました。

月々の出費は、家賃(月3万円程度)、食費(月5千円程度)、光熱費(合計月5千円程度)等々。
会社は制服があるので出勤用の服を買う必要もなく、結構余裕のある生活ができます。

プライベートは?

筆者の住んでいたメキシコ中部の街は、兎に角車社会。
車を持っていなかったため、毎回食料品の買い出しに行くのも一苦労でした。
(当初はなんとかなるやろー!と思っていましたが、予想以上の田舎でした)

主な交通手段は、Uberやタクシー、(時刻表が存在せずいつ来るか分からない!)バス、運が良ければ車を持っている人が乗せて行ってくれることもあり。

なので、外との繋がりを見つけるのは難しかったのが正直な感想。
それでも、街の中心部に出てぶらぶら歩いたり、美味しいと噂のレストラン(特に日本食)を食べ歩きしたり、ハイキングをしたりと、楽しいことも様々。
一方で、ほぼ一日家の中で一人で過ごすことを楽しめるようにもなりました(笑)。

個人的な感想

筆者は、スペイン語学科卒業でもなく、数か月間語学留学した程度の語学レベル(B1、中の下レベル)、通訳経験なし、製造業経験なし、コミュ障、メンタル超弱、トロい、不器用、なのに完璧主義という困ったスペックだったこともあり、特に語学面でかなりもどかしく辛い思いをしました。

言葉が聞き取れず何度も聞き返すことになり、流れを止めてしまい相手をいらだたせることもしょっちゅうで、最終的にスペイン語力が向上するどころか、むしろ話すことへの恐怖心が増したことも事実です。爆
また、通訳であるがために、あまりに気軽な感じで「これ訳しといてっ♪」と依頼されることもあり、複雑な心境に
なることもありました。

そんな感じだったので、筆者にとっては、常に臨戦態勢、毎日がサバイバル☆的な感じでした。

そもそも、外国人と一緒に働くということ自体が本当に大変なことでした。
上で述べたとおり、彼らには非常に救われていましたが、やはり価値観や勤務態度は明らかに違う部分もあり、「暗黙の了解」のようなものも通じず、仕事以前のことに関するやり場のないイライラが少なからずありました。

それでも!
会社の一部分だけでなく全体について知れること、向き合って学んだ分だけできることが増えていくこと、日を経て場数を踏む中で、もともと「点」だった知識がだんだん繋がり「線」となり、それと比例してよりノリノリで通訳できるようになっていく感覚にはたまらないものがありました(いい意味で)。
それと、ベタですが、通訳としてかかわった人たちに「ありがとう」と言ってもらえるとやはり嬉しい。

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わずかでも、自分の今まで学んできた語学の知識、言葉選びが、人の役に立っていると思うとやりがいを感じました。個人的には、特に生活面でのサポート業務が非日常で面白く、成果がその場で見られるので好きでした。

 

・・・結果的には、社内通訳を続けない選択をし、今後も戻ることはもうないのだと思いますが、こんな世界をごくわずかながら経験してみて、通訳という職業は社会的価値があるものだし、まだまだAIとかには取って代わられないぜ!と割と本気で思います。

また、大変さもやりがいも垣間見たからこそ、今後世界中の通訳・翻訳に携わる人たちに敬意を忘れずに生きていきたいなあと思う次第です。

あとは、あれですね。
会議通訳のあの絶望的な緊張感を味わったら、この先大抵のことは大したことなく思えることと思います。笑

興味のある方、迷っている方、まず一歩踏み出してみるのも悪くないと思います!